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かなたむんむんブログ

むんむんっとした事を書き綴ります

自分の生き方を見直すときに読みたい本『持たない幸福論』

かなり昔から、はてなでの有名人として存じ上げていた『日本一有名なニート』phaさん。今回、初めて彼の著書を読みました(本当は発売してすぐに買って読んだのだけれど、ぐずぐずして感想文を完成させるのが遅くなってしまった・・・)。


持たない幸福論 働きたくない、家族を作らない、お金に縛られない


『持たない幸福論』。
タイトルを見ると、最近流行りのライフスタイル『ミニマリスト』についての本かな?と、思われるかもしれません。でも、phaさんは(たぶん)ミニマリストではないし、この本の主題は、物に限らず、自分たちを縛る「概念」ごと一度手放したほうがいいんじゃない?、というところにあります。


本文のはじめの方には、物の所有についても記述があります。

 物はできるだけもたないようにしている。持っているものが多ければ多いほど、いろいろと身動きがしづらくなったり思考が狭められたりして、人生の面白さが減るような気がするからだ。(p.037)


これは、ミニマリズム的な考えといえるでしょう。ただ、この本は、筆者の生き方について、その利点や、実践するための方法を語る内容ではありません。

もう一箇所、少し長いですが、引用。

 
 ゴミ屋敷にゴミを溜め込み続ける老人だって同じだ。他の人間にはゴミを溜め込むという行為は全く理解できないけれど、彼の中ではそれが意味があることで、家の敷地の中は彼が自由にコントロールできる大切な王国なのだ。
 そんな風に人間は(それがまやかしであっても)自分が自分の判断で自由に操作できる小さな世界を必要としているし、その中で自分で考えて何か変化を作っていくことに楽しさを感じる。結局人間のやっていることなんてそれだけのことだ。社会に出て一生懸命働くのも、庭で草木をいじるのも、ゲームの中で主人公のレベルを上げるのも、ゴミ屋敷にゴミを溜め込むのも、本質的には変わらない。

 要するに何が言いたいかというと、人はそれぞれ生きている世界や大切にしているものが違うけれど、どの生き方が偉いとか正しいというものはない。(略)だから、違う世界に住んでいる他人の言うことは気にしなくていいし、自分が自分の世界の中で充実感を得られるにはどうしたらいいかを考えよう。(p.047)


そう、本書はそのタイトルが想起させるような「持たないことが幸福だ」「持たないことで幸せになれる」と主張する内容では、ありません(むしろ、そんな主義主張を持つことさえ、しんどくないですか、そんなの手放しましょうよ、と言われそう)。

だから、ミニマリストを目指してない私、むしろ今でも好きなものに囲まれることに幸せを感じる私でも、面白く読めるんです。



『持たない幸福論』は、「あなたが幸せになるための方法はこれですよ」と教え導いてくれるHowTo本ではありません。
「生きるのがつらそうな人」=「幸せでない人」が多すぎる現代日本において、各個人がそれぞれに幸せになる生き方とは?という大きなテーマに対し、身近なところから丁寧に考察した、その名の通りの現代版『幸福論』なのだと思います。

ですので、ジャンル的には「実用書」ではなく「思想・哲学」の棚に置きたいところ。
ただ、思想書といっても、phaさんの文章は、独特のテンポの文体なんだけど読みやすいので、その結論に至る思考過程がわかりやすく提示されています。
おかげで無理なく読めますし、読みながら、「ああ、そのとおりだなぁ」と思う部分もあれば、「それはちょっと違うのでは?」と感じる部分も自然に湧いてきます。

そう、本書は、読み手側が自分の考えを見つめなおすのに最適なんです(だから、『持たない幸福論』というタイトルに疑問を感じる人にこそ、読んでみてもらいたいかも!!)。
自分の中に存在する、言語化されていない「自分の考え・生き方(=主義)」を引き出してきてくれる・・・そんな稀有な一冊だと思います。

これからも、時間をおいて、あるいは生き方に迷ったときに、繰り返し読みたい。


最後に、すごく好きな一節を引用。

今の社会は生きるのに必要な物資や技術といったハードウェアは既にかなりのレベルで整っているから、あとは「どういう風に生きるか」というソフトウェアさえうまくインストールできれば、もっと伸び伸びと楽しく生きられるはずだ。そうした新しい生き方を考えるヒントとして、この本が役に立てばいいと思う。(p.021)


この文章にピンときたら、ぜひ一冊まるごとお読みください。また、本節を含む「はじめに」の部分は、幻冬舎のホームページでも読むことができますよ。www.gentosha.jp